高校における救急講習会の前に沙織からのメッセージとして お話させていただきました

「沙織と救命」と題してー2004年9月6日

     
                     
こんにちわ 
川崎沙織の母 川崎真弓です
今日はよろしくお願いします
たくさんの人の前で話すことは初めてで とても緊張しています
このようなことになったこと〜自分でも驚いているのですが・・・
話しはへたですし うまく話せるかどうかわからないので原稿を書いてきました 
それを読みたいと思います よろしくおねがいします

沙織のこと 覚えているでしょうかー
沙織は2002年4月この仁愛高校に入学しました 元気でいたら高校3年です
2年前の9月6日は 高校はじめての学校祭の体育祭でした
前日の文化祭にはマーチングの一員として出場しています
2年前のこの時間少し遅れて体育祭が始まり 沙織がリレーのスタートをきって走り始めた時間だとおもいます 
2年後の同じ時間にここでこうして話をするのも 偶然とはいえないなにか とても不思議な力を感じています 
ここにこうしているのは 私ではなく 私の姿をかりている沙織なのかもしれません
沙織からのメッセージとして 聞いてくださいね

あの日は朝から小雨模様でした 沙織は8時ギリギリまで家にいて「早くしなさい」と言う声にものんびりと 
空模様を気にしてタオルを2本肩にかけ自転車で出かけていきました 
その後 すぐ 私も仕事に出かけ 10時40分ごろ仕事場にお父さんから電話があって沙織が倒れたことを聞きました 
何処をどう走ったのか 良く覚えてないのですが
病院には学校の先生もきていて そこで初めてリレーにでたことを聞きました 
病院の先生の説明では「心室細動」という心臓がパニックになる状態になってたおれたことをききました 
その原因は今の医学ではわからないということでした 
病院に運ばれたあと電気ショックで心臓はいったん力強く戻ってきたのですが脳の動きが戻りませんでした 
生存率は2%「もう少し早く脳に酸素がいっていたら 脳に酸素がいかなかった時間がながすぎた」という先生のその言葉が今も忘れられません 
懸命な治療にもかかわらず 沙織は4日後の9月10日に16歳の短い生涯をとじました

沙織は何故死ななければいけなかったのか
病気一つしたこともなく 健康診断でもなに一つひっかからなかったのに・・・
どうして? 何故?ということばかりの毎日でした
まず その時の状況がしりたくて 担任の先生やお参りにきてくれたお友達の話しを聞くと 
走る前の沙織はいつもと変わらずとても元気でにぎやかに楽しんでいたそうです 
そして 元気にスタートをきったそうです しかし 走り終えた沙織はトラック内までふらふらと歩いてきて倒れたそうです
きっと 走ったことで沙織の体の中に異常がおきたのでしょうね
その時 そばにいた先生が寄ってきて声をかけくださり 沙織は何かをいいかけて再び倒れたそうです 
その後 他の先生を呼びにいかれ 集まってきた先生たちの手で担架にのせ その場を離れて 
場外ではじめて心肺蘇生法がおこなわれたと聞きました 
このあと 救急法の講習会が開かれます 
救急法の講習会を是非 開いて欲しいとお願いしたのは私です
というのも あの後 2つの話しが私の耳に届いてきました
一つは大阪の小学校で体育の授業で心臓発作をおこした子が迅速な救命リレーのもと今も元気に学校に通っているという話し 
そして もう一つは 仙台の高校の体育の先生が走った後倒れた子供をその場ですばやい心肺蘇生法を行い一命を取り留めた話し 
その先生は救急救命のインストラクターの資格をもっていたそうです 
もしも沙織の命も 救命リレーがもっと迅速におこなっていたら もしかしたらという、あきらめきれない悲しい親の思いからです
私は医学にも救急にもまったく関係のない ただのお母さんです
みなさんのお母さんと同じ子供を持つお母さんです 元気で病気とは縁のない沙織が倒れたということは他人事ではない 
みなさんにもみなさんのまわりでもいつ起こるかわからないということですよね 私は沙織のお参りにきてくれたお友達と話をしているうちに 
この子達の命も守ってやらなければとおもうようになりました 
こんな悲しい思いを他の誰にもさせてはいけないと思うようになりました 
今 隣の人が倒れたら どうします? なにができますか?
物事を知るということは 運命さえもかえるということになります
知らなかったから あれは仕方のないことだったとそれで終って良いのでしょうかー
私も沙織のことがなかったら救命法は車の免許をとったときだけで 知らないと同じレベルでした 
そばにいる人の意識で助かるかもしれない命があると知った時 私にもなにかできるかもしれないと私も講習会を受けカードをいただいてきました 
そのときに そばで誰かが倒れた時 野次馬の一人となって見て見ぬふりをするかー 
それとも 声をかけ 命をつなげていけるか それはそれほどむずかしいものではなく 救急車がくるまでの6分間の最大限の努力です 
それがCPR(心肺蘇生法)です 命をつなげるお手伝いができるということをおそわりました CPR 覚えてくださいね

その後 いろんな本やネットで 除細動器AEDという存在を知りました
心室細動 というのは 簡単にいえば テレビやラジオのコンセントがなんらかの原因でぬけたようなものだそうです
テレビ自体にはなんの故障もないけれどコンセントがはずれたらうつりませんよね
そして はずれたコンセントをいれたら またテレビはうつります
このコンセントをいれてあげるような作業を除細動器は行ってくれます
沙織の場合にも 除細動器があったら きっと今もあなた達と同じように普通の高校生活を送っていただろうと主治医の先生もいっておられました
脳というのはいったん酸素がとまると6秒で失神 3分で脳死状態になり 10分以内に蘇生不可能となります 
骨とか皮膚とかはケガをしてもまた治癒力で再生していきますが 脳だけは損傷するともう再生はしない臓器です 
そして 脳が大切なのは体の司令塔だということですよね 司令塔がうごかなくなると次第に体の機能は停止に向かいます
だからこそ その場での救命としてAEDが必要だといわれています 是非 その除細動器AEDという存在をしってください AEDです!
アメリカでは 除細動器AEDは病院や救急車で使用されるだけでなく、パトカー、消防車、航空機・空港・スポーツ施設 テーマパークなど
人の集まるところに設置されはじめて約15年になるそうです。
日本での救命率は3% それに対して アメリカでは60%だそうです
急に人が倒れるということは普通ではありません 倒れた人は 顔が土色になり 唇が紫になり 今まで笑っていた人とは別人です
でも その人に命を吹き込むことができるのがそばにいるあなたであるなら
沙織のことから目をそらさないで しっかり そのことにむきあってください
これから先 きっとあなたたちにもかけがいのない大切な人がたくさんできるはずです
学校の先生や幼稚園の先生 福祉関係に進む人もいるでしょ もちろん 大切な家族もできますよね 
これから先 人が突然たおれることがないとは言えませんよね  
そして 忘れてはいけないことはそばにいる大切な人の命を守るということは すなわち あなたの命も守られているということですよね

この2年は ながい時間が流れたように思います もう10年くらい沙織と会ってないような気がします 
親というものは悲しいもので もしも あの時 日本にも除細動器が使えて あの場所にあったならーとか 
あの時 一分でもはやく心肺蘇生法が迅速におこなわれていたらーとか
あの時 体育祭が中止になっていたらーとか もう最後には高校なんかいかなきゃよかったのに そんな思いまでが波のように繰り返されます 
でも だんだん少しずつ 沙織はこの高校で過ごせたこと 友達と楽しい時間をすごせたこと マーチングバンドでがんばったことを
よかったと思えるようになりました 人を恨んでもなにも生まれてはきません 
いろいろ本をよんだり ネットで子供を亡くした方たちと話しをしたりして
あの子が私の子供として生まれてきたことは偶然ではなく あの子が私を選んできてくれた そう思うようになってきました
よくだれがうんでくれっていったのよ って思うことありますよね でも この命は自分自身で親を選んでこの世にでてきたと 
そういう風にかんがえたら 私はあの子の死を無駄にしないで意味のあるものにしてやりたい 
あの子の残したメッセージを伝えるのが私の宿題なのかなとも思っています

今日9月6日は沙織の18歳のお誕生日でもあり 私にとってはとても辛い日になりました。 
でも 姿はみえなくなったけど私はこの2年の間 沙織からいろんなことを教わりました たくさんの人との出会いをつれてきてくれました 
ネットをしていたこともありますが 同じ子供を亡くした人たちとの本もつくることが出来ました 学校でもたくさんの人に読んでもらい感謝しています 
その中で本当にいろいろな人生があって、皆、重いものを背負って生きていることをしりました。
今 現在 病院で必死に難病と闘っている人 生まれながらの障害と共に生きている人
自分を失って、一日中奇声を発しながら、ベッドに拘束されて、生きている方もいます
そして そういう命を見守っていく周りの方もまた、懸命に生きておられます。
手足が自由に動き 自分で学校にこられることのあたりまえさが本当は当たり前のことではないこと 
今 健康で笑っているあなたの命も期間限定だということを忘れないで下さい そして お願いがあります
生きていくといろんなことがあります 子供が目の前でなくなっていくこと 自分が怖い病気にかかるかもしれません 
信じていた人に裏切られることもあるかもしれません
でも この先なにがあっても自らの命を絶つようなことは絶対しないでください これは沙織との約束にしてください  
沙織の分も生きてかならず次につなげていくようにお願いします

ある日儒学の本読んだ時「仁」という言葉を見つけました 仁愛の仁です
仁とは 他人をいつくしむ心 生きとしいけるものの命を大切にする心だそうですね
その仁愛高校で沙織の命が消えたことも偶然ではなく必然だった
みなさんがこの仁愛高校で学ぶことになったのも偶然ではなく必然だったと 
仁の心を学ぶにふさわしい子供たちだとそう思います
この後 救急法の講習会です
講習会を通して 命について考えるきっかけになれば幸いです
そして この先 あなたのそばで倒れた人がいても ただ オロオロしているだけでなくすばやい判断と対応ができるような女性になって 
沙織の死を無駄にしないで意味のあるものにしてやってほしいと心から願っています 
今日は へたくそな話につきあっていただいてありがとうございました


             
       
             
    講習会の聞いて 生徒さんたちから感想をいただきました
たくさんいただいたのですが その中から少し抜粋させていただきました
             
 

こんにちわ 今日は川崎さんの話を聞いて、また2年前の記憶が戻ってきて涙がでてきました。
きっと さおりのことは一生忘れることなんて絶対ないと思います
私は、自分に身近な人がなくなるなんて初めてだったので 今までに感じたことのない悲しみを初めて知りました。 だから さおりにありがとうって言いたいです
また 今日の話を聞いて 上手にいえないけど、すごい感じるものがあって 自分も救急のインストラクターの資格欲しいなとか思ってしまいました。
これから先 自分にも大切な人が出来て もし 必ず失う日が来る運命ならその人との時間を何よりも大切にしていきたいし 人との出会い 別れを一つずつ大切にしていきたいと思いました
「ずっと、いっしょだよ」という本もすごい読んでよかったと思いました。

 
             
  私は今日の講演を聞いて本当に良かったと思いました。本当にこの2年間辛かったと思われますが、
冷静に講演をしていただき 本当にありがとうございました。さおりさんは体育祭のリレーで亡くなられました。私たちは急に誰かが倒れたとき どうすればいいのかわからなく ただ 救急車を待つ事しか出来ないと思っていました。しかし その救急車が来るまでの6分間ですが その間、心肺蘇生法がとても大事だとわかりました。私はこれから、倒れている人をみたら ちゃんと心肺蘇生法をして6分間の命をつなげ助ける事が出来たらいいと思いました 沙織さんの死を通して、私たちは本当に大切な事をたくさん学ばさせてもらいました。 本当に今日の講演 ありがとうございました。
             
 

今日のお話を聞いて ものすごく涙をこらえることになりました。川崎さんとはクラスはちがいましたが
マーチングという同じ部にいました 何度か話したことがありました 実をいうと私は川崎さんが倒れたことを知りませんでした。 人つたいに誰かがたおれたと聞きました そして 学校で川崎さんと知り 校内の放送で意識が戻らないと聞き 自然と涙が出てきました 部活ではほとんどの人が涙をながしていました。また 終礼の時に校長が画面に出てきた時はドキッとしました すごくイヤな予感がしました。その事を聞いたときはぼー然となって涙より‘なんで?!’と思いました 部活では川崎さんにみんなでテープに声をいれて それを持っていきました その中に私は‘また 部活を一緒にしよう’と言いました。でも かないませんでした 私はそれから何度もいろんな事を考えました。今日の話の中で親の気持ちというのを知りました そして 残された人の悲しみを知りました ものすごく辛いことだと思いました でも それを2度とおこさないように努力をしていく事は周りの人の気持ちも動くと思いました。今回 こんな良い話をきいてよかったです 決して このような事がおこった事を忘れないと思います
でもそれに対して 考えてばっかりでなく 行動をおこしていきたいです

             
  さおりのお母さんの講演を聞いて さおりのお母さんの言葉の一つ 一つが心に残りました
私たちの知識で人の運命をかえられるのなら しっかり救命救急法を学ぼうを思いました。‘偶然ではなく 必然だったのかもしれません’といっていたさおりのお母さんはとてもかっこよかったです
救命救急法をみて 覚えることがたくさんであんな事と人が倒れたことすらにパニくってしまうのに出来るかどうか心配です もっと救命救急法を学んで人の役にたちたいです 今日は講演ありがとうございました 最後に誕生日 おめでとう さおり
             
  今日はさおりチャンのお母さんの話をききました
今は、普通に話してたけど 今までここにたどりつくまでには長い時間がかかったと思います!!
けど、ホントに信じられないと思います。あの日は リレーの時 私はさおりチャンと同じ走者で「緊張するね」などと普通の会話をしていました。それなのに走り終わった後 急に倒れてしまいビックリしました。あのことは絶対忘れるコトはナイと思います。で さおりチャンのお母さんが言っていたように 救急救命法を知っている人がいて すぐにそのことをやっていたら 今頃 一緒な3年生でいたのじゃないかと思います あたしたちも これから いつなんどきそのようなコトに会うかわかりません だから きちんとやり方をならって そういうときにでくわしたトキに てきぱきと行動し その人の命を助けてあげるコトができたら なんとうれしいコトか!! これで少しでもなくなる人がいなくなるなら さおりチャンの死をムダにしないためにも、きちんと習っておいても損はないと思うし 自分や人のためにもなるのできちんとならっておきたいと思います