Recollect−沙織のこと

 

「大丈夫ですよ よくあることですから」

体育の授業でめまいを感じ その場に座り込んでしまい そのあと保健室で休んでいた娘を迎えに行き

時間外で見てもらった医者は笑っていった 

「先生 この子 2年前にも走っていて倒れたことがあるんですよ 運動は禁止した方がいいですよね」

そういう私に

「そんな今やりたいこといっぱいの子にあれもだめ これもだめはよくないですよ 検査結果も異常ないですからね」

次の日の朝 沙織はいつもの通り 元気に学校にでかけていった

心配しなくていいのかなぁ〜 そんな思いを感じながらも 元気に過ごすあの子を見てると

いつのまにかお医者さんがいうんだもん まちがいないかなぁー と思ってしまっていた

2年前も体育の授業で倒れたことがある そのときも何故たおれたのがわからないから

検査入院をして調べてもらった そのときの医者は

「てんかん的傾向にあるか 過呼吸か・・・ その日の気温や体調によっても変わるからねー今後も倒れないという

保障はないから とりあえず てんかんの薬をだしておきますか? 

でも この薬は副作用が強いことを分かった上で飲むか飲まないか 決めてください」

そういってだされた薬をみるとたくさんの副作用が記されていた

たしかな原因もわからないのに そんな薬のませていいのか?と しかも 親がきめるの? 

だったら それほどのことでもないのなら つよい薬を飲ませない方がいいのではと 

担当の看護婦さんにも相談をして 飲まないことになった

 

こんなふうに書いていくと 一度でも意識を失ったのに 親はなにやってたんだー そんなふうに自分でも思う

私は何をやってたんだろー

沙織には「疲れると倒れるから 絶対無理はしちゃだめだよ」 っといいながら

いつもの沙織は元気いっぱいで よく食べるし よく寝るし 親のいうことは聞かないし

高校生活を楽しんでいた 帰ってくるとパソコンでイラストを描き 好きな音楽をCDにとって

テレビでやってるダンスをまねて踊ったり 

そんなとき 学校の健康診断の結果も異常なし と出た

 

そして そんな沙織が倒れた 

 その日の朝は いまにも降り出しそうな天気 でも 朝6時のテレビで体育祭を開催すると伝えた

いつものように 時間に遅れ気味な沙織をせかすように出した 外に出た沙織は雨が降り出しそうなので

 「お母さん タオル〜」

あわててタオルを2枚もたせ 「気をつけるのよ」と見送ったのが最後になった

私はいつものように仕事にでかけた 仕事場に電話が入った 主人からだ

「沙織が倒れたって」 あわてなかった 「また〜?すぐにいけないよ お父さんいってよ」

私は仕事仲間に告げると 仕事をはじめようとする私にもういいから いってあげてと押し出してくれた

心配も 危機感もなにもなかった グランドで倒れたなら体操服汚れてるだろうなーっと

家によって バスタオルと着替えをもって 病院に向かった

私の頭の中には あの医者の「大丈夫ですよ- よくあることですからね」の声が響いていた

 


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